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5月26日。女子シングルス準々決勝。早田ひなは、中国の王芸迪と対戦した。
1ゲーム目。王のサービスからのコースを突いた打球点の早い両ハンド攻撃が冴える。早田もバックハンドの早さで対抗するが、王が上回りこのゲームを「4」で取る。
パリ五輪シングルス選考ポイントで首位に立つ早田にとっても、中国人選手の壁は相当高く、厚い。しかし早田は2ゲーム目から高い対応力を発揮する。「自分ができることを信じてするだけ」という落ち着きを見せ、経験に裏打ちされたコース取り、たっぷりと蓄積された【対・中国人選手への対策】それらの情報を活かし、早田は王の打球点を上回る速さ、得意のバックハンド攻撃で王を左右へと揺さぶり、2ゲーム目を早田が「3」で取る。続く3ゲーム目も早田が「9」で取り、ゲームカウント2-1とリードする。にわかに観客席から声が上がる。しかし4ゲーム目は王が取り、ゲームカウントは2対2のイーブン。
5ゲーム目。再び早田の猛攻。バックハンド、フォアハンドのコンビネーションが良く、王に攻撃を許さずこのゲームを取り、勝利に王手をかける。会場の空気が一気に上がり「HINA!」と声援が飛ぶ。
6ゲーム目。王が5-3とリード。ここから早田は中陣からしっかりと回転をかけて王のミスを誘い、早田が6-5と逆転。ここですかさず中国ベンチがタイムアウトを取る。流れを切りたい中国であるが、早田が8-6とリード。勝利が近づく。そして王のサービス。ここで早田がレシーブミス。ここで早田ベンチがタイムアウト。手に汗握る展開。卓球という競技の最大の醍醐味の瞬間である。タイムアウト後は王のドライブが決まり8-8。その後も王が早田のバックサイドにドライブ、フォアサイドにドライブ、そして決定打を再びバックサイドにドライブと厳しくコースを突く。結果、11-8で王が取り、フルゲームとなる。
最終ゲーム。早田が8-5とリード。快挙の瞬間に会場が大きく湧く。だが王は諦めない。6ゲーム目の再現かのように、王は丁寧にコースを突く。8-6、8-7。王が早田の背中に迫る。そして8-8と追いつき、気が付けば8-10と王マッチポイントを握る。「やっぱり中国か」という空気が会場を包む。だが、早田陣営は決して諦めず、自分を信じてプレーをする。驚異的な粘りで10-10。会場も盛り上がる。デュースとなり、常に王が先行し、早田が追いつく展開。14ー14。早田のフォアサイドに放ったバックハンドドライブがエッジをかすめ、ついに早田がマッチポイントを握る。しかし次のラリーは王が制し、15-15。会場からは「ジャーヨォ」「HINA!」という声が飛び交う。次はお互いにサービスエースでとり、16-16。次のラリーは早田の思い切りの良いバックハンドストレート攻撃が決まり17-16とマッチポイントを握るが、次は王のドライブが決まり17-17となる。1本ずつの攻防に観客は声をあげる。早田リードで迎えた20-19。ここまで早田は王のフォアサイド、バックサイドという流れで攻めていたが、思い切ってフォアサイドを2回攻める。しかも2回目はサイドを切るようなバックドライブ。このボールを王がノータッチ。早田は両手をあげて喜びを表現したがすぐに顔を覆った。劇的な勝利に会場から惜しみなく拍手が送られた。
▲勝利を決め、涙の早田
女子シングルス準決勝。孫頴莎(中国)と対戦。前日の仲間の敗戦を受け、孫は気合いが入っていた。0-0。1本目から、厳しく早田のフォアサイドを切るボールを送る。球の質、速さとも全開である。早田を相当研究してきたことが伺える1本であった。試合は孫のペースで進み、ゲームカウント3-0とリード。4ゲーム目を早田は取るが、5ゲーム目は孫が取り、4-1で孫が勝利した。勝利が決まり、孫は早田の健闘を称え、握手と肩をポンと叩いた。敗れた早田であるが、悔しさと笑顔がみえた表情であった。
▲0-0の1本目から厳しいコースを突いた孫(奥)
▲勝利を決め、珍しくポーズを取る孫
▲早田の健闘を称えた
WTTシリーズの雰囲気とは違い、オリンピック、世界選手権では、いつもと違う経験が得られる。世界一を目指す早田にとって、今回とてつもない経験となったはず。今何が足りず、これから何をすべきか、と直接肌で感じられた大会となった。世界一、と口に出すことは簡単であるが、実現するのは並大抵のことではない。しかし早田ひな、であれば実現できるはず。実現できると信じている。これからも目標に向かって突き進んでいって欲しい。