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2016.01.20

#RESULTS

天皇杯・皇后杯平成27年度全日本選手権大会(一般・ジュニアの部)を振り返る 伊藤美誠編

1月11~17日まで行われた平成27年度全日本選手権。組み合わせは2015年12月に発表があった。
卓球人にとって、組み合わせを見るのも一つの楽しみではないだろうか。組み合わせを見ると、昨年度ジュニアで優勝し、ジュニアの連覇記録がかかる女子ジュニアに「伊藤美誠」の名前がなかった。伊藤選手の場合、女子シングルス、女子ダブルス、女子ジュニア、混合ダブルスと4種目に出場することができる。多数の種目に出場し試合をこなすということは、それだけ体力を使う。また全日本選手権という過酷の舞台。神経もすり減らす戦いが続く。ジュニアの部に出場しない、という苦渋の決断。逆にいうと、それほど「女子シングルス優勝。皇后杯獲得」に向けて準備をしていたのではないか。

 

全日本選手権がはじまる。15歳の少女であるが、ラケットを握れば立派なアスリート。しかし、試合が終われば少女に戻り、応援してくれるファンに、写真撮影、サインなど気さくに応じる。全日本という舞台で試合に集中したいのにも関わらず、気にしないあたりは、大物な雰囲気を漂わせる。
注目を集めた「みう・みま」コンビのダブルスは、初戦で敗退。試合後、悔しさをのぞかせた。しかし、シングルスに向けて、気持ちはすでに切り替わっていた。

 

シングルス初戦の相手は左利きのバック面表ソフトラバーの選手と決まる。母・美乃りさんから「左利きの表ソフト選手を練習相手に探していただけませんか。またどんなラバーを使っているかも調べていただきたい」と連絡が入った。 万全の準備をして臨む。結果的にゲームカウント4対1で勝利。ベスト32位を決めた。続く相手は同じ左利きのバック面変化系ラバーの選手。落ち着いて対処し、ゲームカウント4対2で勝利、ランク入りを決める。そしてベスト8をかけての戦いは、2016年世界選手権代表でもある若宮三紗子(日本生命)である。

 

若宮との1戦は、伊藤のペースで進み、幸先よく3ゲームを先取する。圧巻のプレーに会場内の多くの人が勝利を確信する。しかし、若宮が意地を見せ3ゲームを奪いゲームカウントで並ぶ。しかし最終ゲームは伊藤がギア入れ換え勝利、ベスト8入りを決めた。

 

ベスト4決定戦は16日。同じジュニア世代で、今大会ジュニアの部で優勝している浜本由惟選手(JOCエリートアカデミー/大原学園)と対戦。伊藤選手は16日はこの1試合しかないというスケジュール。調整が難しかったはず。試合は得意の積極性が見れず、やや安全に入ってしまったのか、1ゲームを落とす。そして2ゲーム目もリズムに乗れないのかリードを許す。しかし、ここで松崎コーチがタイム、アドバイスを行う。するとアドバイス後は本来の伊藤選手のプレーが随所にみられ、第2、3、4、5ゲーム目を取り、勝利。勝利が決まった瞬間、伊藤選手は会心のガッツポーズを見せた。

 

 

迎えた最終日。勝負の世界は残酷である。なぜなら準決勝の相手は、ダブルスパートナーであり、普段から親交のある平野美宇(JOCエリートアカデミー)だからである。
以前伊藤選手に「ミウちゃんとは普段から仲が良い。ただ試合で対戦するとなると話は別。選手として尊敬していますし、対戦相手として勝ちにいかなければいけません」と話してくれたことを思い出した。
注目の1戦は、平野選手のプレーに、伊藤選手の持ち味が出せずストレートで敗戦してしまい、悔しさをのぞかせた。目標としていた優勝に届かなかった。きっと悔しさでいっぱいなのだろうと、考えたが、表彰式では満面の笑みを見せた。

 

 

2010年9月に世界ランキング484位として初登場。そして2015年1月には41位にまで上り詰め、15年9月に世界ランキング9位。そして16年1月発表のランキングでは12位。日本人選手として堂々の3番手につけている。

 

日頃からコーチをし、ベンチに入っている松崎氏も「試合中のミマは、何をするのかわからないので、私もビックリさせられることが多いです。アドバイスにおいても、私がアドバイスしたことに、プラスアルファを加えます」と評する。

 

 

全日本選手権ではベスト4という結果で終わってしまったが、中学3年生でベスト4は快挙と言える。また、リオ五輪ではメンバーに名を連ね、2月28日からマレーシアで行われる世界選手権では日本代表として、プレーすることが決まっている。

2015年世界選手権蘇州大会では、ロンドン五輪単金メダルの李暁霞(中国)と互角以上の試合を演じ、世界、卓球王国・中国を脅かせた伊藤美誠。伊藤の物語はまだまだ続く…。