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水谷隼(木下グループ)優勝インタビュー
――今の素直なお気持ちをお聞かせください。
水谷 昨年、張本に負けてから絶対に優勝するぞと思ってこの一年間練習をしてきたので、まだ実感がないです。やはり、張本にはまだ勝てないんじゃないかという不安もありましたし、張本が上がってこなかったので。
――10度目の優勝は今までの優勝と違いはありますか。
水谷 今までも本当に苦しい全日本でしたが、今回もめちゃくちゃ苦しかったです。
――これまでの10度目の優勝を振り返ってください。
水谷 初めて優勝したのは12年前なので、当時のことはそんなに覚えていませんが、今やっと10回目の優勝を達成してみて、1回だけでもこんなに大変なのによく今まで9回優勝してきたなと思います。
――勝ち続けられている強さとはなんですか。
水谷 一番大事なのは気持ちです。絶対に誰にも負けないんだという強い気持ちを持って臨めたことだと思います。
注目する大会なので、「張本が優勝するだろう」とか「水谷が勝てないだろう」とかそういった声が聞こえてくる中で、自分の存在をアピールする唯一の場なので、そこでのプライドがあるからこそ頑張れていると思います。
――昨年度は、張本選手に負けてから世界卓球やワールドカップに出られなかったりと、苦しいシーズンではあったと思いますが、そこからここに照準を合わせてこられたのはなぜですか。
水谷 僕にとって全日本選手権というのは、他の大会と比べて想いがすごく強いです。他の大会でどれだけ負けても全日本では絶対に他の日本人選手には絶対に負けないという気持ちがありました。確かにこの一年苦しかったですが、これからもこの苦しさは続いていくと思います。
――思い入れのある全日本となりましたが、11、12度目の優勝をみんなは期待していると思います。先ほどの「最後の全日本」という真意を教えてください。
水谷 大会前から10回優勝したらもう自分の中で満足と思っていました。2年前に9回目の優勝で最多記録を更新してから、なかなか全日本への思いを強く持てなくて、周りが優勝を期待するプレッシャーに正直もう勝てないというか、この全日本でラケットを振るのは無理なんじゃないかと思いました。
――2019年は大事なシーズンだと思いますが、東京五輪に向けての自分の中のイメージで「最後の全日本」という意味なのでしょうか。
水谷 日本代表としてプレーするのも来年が最後だと思うので、V10を達成できて、引き際としては悪くないのではないかと思います。これから年齢を重ねてパフォーマンスも落ちてくると思うので、今までのように強い気持ちで臨むことは難しくなってきています。その分、今回の全日本にかける思いはものすごく強かったので、その思いが強かったからこそ、優勝できました。達成できたことで、全日本への思いがプツンと切れました。
――次の目標はなんですか。
水谷 来年いよいよ東京五輪が始まるので、その出場権利を勝ち獲ることです。
――優勝後観客席に飛び込まれましたが、その真意とは。
水谷 五輪が終わってから、追っかけというか僕のことを好きでいてくださるファンの方が増えました。飛び込んだ場所にすべての試合を観に来てくれているような主婦のファンの方がいて、その方たちのおかげで今の自分があると思うし、五輪でメダルを獲った後も燃え尽きずに頑張ってこれたので、自然と「ありがとう」という意味を込めてあそこに飛び込みたくなりました。
――飛び込みことはもともと決めていたのでしょうか。
水谷 ふと頭をよぎりました。「行け」と誰かに命令されたかのように、飛び込みたい気分だったんです。
――昨日まで張本選手がいる限り自分が優勝できる確率は25%だとおっしゃっていましたが、決勝で大島選手との対戦が決まった時にどう思いましたか。
水谷 大島が決勝に上がってきて、単純に自分か相手のどちらかが勝つので50%に上がったと思いました。張本は部も良くないですし、25%ですね。
――決勝の勝因を教えてください。
水谷 ラリーでは相手に分があったので、サービスレシーブで常に先手を取れたことです。早い段階で有利に試合を運べていたと思います。
――10度頂点に立ったからこそわかると思うのですが、伊藤美誠選手の2年連続3冠のすごさみたいのは感じるのでしょうか。
水谷 彼女のメンタルは素晴らしいです。僕みたいなのとは…比べ物にならないです(笑)。彼女の試合をよく観ますが、アドバイスをほしいです。自分は本当に一試合一試合一杯いっぱいで一試合勝つことさえ難しいです。彼女のプレーを観ているとすごく試合を楽しんでいるし、見習いたいことが多いですね。
――来年、張本選手との対決が観たいなと思う人はいると思うのですが、もうないのでしょうか。
水谷 僕は天邪鬼なので周りが観たいと思えば思うほど、出ない確率が上がると思います(笑)。今日みたいに大島が勝つこともあり得ますし、正直僕じゃなくても他の選手がいい試合を繰り広げてくれると思います。張本に立ちはだかる敵は日本にもたくさんいます。
――張本選手を破った大島選手について。ダブルスも組んで知った間柄だと思いますが、最近の大島選手の成長についてどのように見ておられますか。
水谷 非常に戦術の幅が増えたと思います。試合をしていて、自分がいい展開を作ってこのまま行こうと思ったときに大島が上手く戦術を変えてきて、なかなかリードできませんでした。また、バックハンドがすごく上手くなっていて、バック対バックでは自分の方が分が悪かったです。
――ここ13年、全日本の決勝には必ず水谷選手の姿があって、来年以降はそれが見られないということで、自分が立ってきた全日本という舞台を後輩たちに託すことになると思います。来年以降後輩たちに期待することを教えてください。
水谷 自分が13年連続決勝に進出して、決勝の舞台に立つということが、どれだけ辛いことかというのを経験してほしいです。勝つことも大変ですが、決勝の舞台に立つということも苦しいです。
僕の場合は「早く全日本終わらないかな」と思ってしまいます。苦しすぎて耐えられないです。その苦しさを乗り越えて優勝をつかんでほしいです。
――先ほど試合直後のインタビューで「同世代の選手たちと壁になる」とおっしゃっていましたが、どういった意味なのでしょうか。
水谷 男女ともに若手の選手がすごく力をつけてきていて、卓球のスタイルも最近では前陣速攻でなければ勝てないと言われてきています。僕らの世代は今のスタイルに対応することができていなくて、年齢を重ねれば重ねるほどパフォーマンスは落ちてきます。ただ、僕たちが後輩たちの壁にならないと日本のレベルアップは望めないと思います。海外でのプロリーグを経験して学んできたことを伝える意味があると思います。全日本選手権には出ない予定ですが、世界の舞台ではまだまだ戦いたいですし、もっともっと強くなりたいと思っています。
――全日本で連覇をしてきたこともあれば、連覇を吉村選手に止められた経験もあると思います。連覇をする難しさや、今回張本選手が連覇をできなかったことはどう感じていますか。
水谷 張本が連覇できなかったのは、少し調子に乗りすぎたかなと思います(笑)。やはり謙虚にいかないと足元をすくわれるというのは、彼が僕に教えてくれましたね。