OFFICAL ACCOUNTFOLLOW US
TOPICS
昭和22年創刊、800号を迎えたニッタクニュースのバックナンバーから編集部がピックアップしてお届けするページです。
早田ひな選手(日本生命/ニッタクアドバイザー)のインタビューを紹介!令和初の皇后杯覇者となった彼女が何を思うのか。彼女を成長させたのは何か。その素顔に迫ります!
※ここに紹介の記事は、原文を一部抜粋、編集しています。敬称略
プレミアムインタビュー早田ひな(日本生命)
「自分の軸を作る」
今や、9名が世界ランキング50位以内という日本女子。強豪ひしめくハイレベルな闘いの場となった全日本選手権(以下、全日本)で早田は令和初の皇后杯覇者へと登りつめた。
優勝直後のインタビューで「たくさんの人が応援してくれていた。絶対諦めるわけにはいかなかった」と、涙ながらに語った。
去来していたのは東京五輪日本代表選考レースの日々。シングルス代表選考対象となる20年1月時点の世界ランキングで早田は6番手。上位2名が代表となるため、すでに望みは絶たれていた。そして、同時に発表された団体メンバーにも、早田の名はなかった。19年2月のポルトガルオープンでは、その直後の4月に世界チャンピオンとなった劉詩雯(中国)に勝利するなどの実績も上げていただけに落胆は大きかった。
その悔しさを乗り越えて、全日本チャンピオンとなった早田は、興奮冷めやらぬ大会2日後に、彼女のルーツ、石田卓球を訪ねていた。
まさかの全日本選手権優勝
「優勝はもう少し時間がかかると思っていたので、まさかの優勝でした」
早田は語る。五輪代表選手のなかに自分の名前がなかったことが一つのきっかけとなった。
「東京五輪代表の発表後、ここから色々変えて、変わっていかなきゃ、変わっていく自分が楽しみだな、と思っていた矢先に優勝。びっくりですよね」と笑顔がこぼれた。
どのアスリートも最大の目標としている五輪大会。落選はショックだったが、それを力に変えた。
優勝直後、皇后杯を手に
ぶれない自分の『軸』
世界選手権の選考会が終わり、自分のプレースタイルを考える余裕が生まれたのも、自らを見つめ直すきっかけになったという。
「それまでは切羽詰まっていたというか、余裕がなく、なかなか自分を変えることが出来ずに、同じような負け方をしてしまう試合が多かったと思います」と分析する。
そんな中で、ダブルスのパートナーでもある伊藤美誠(スターツ)からも大きな刺激を受けたという。
「伊藤選手は、人にないものを持っているからこそあそこまで戦えて、世界ランキングも3位。『美誠は美誠。私は私』と自分らしさを追求していくことが大切だと考えました。
対戦相手を意識することは大切ですが、相手を上回る自分らしさの方がもっと大切だと感じました。例えば、今まで負けている相手に対してこうした方がよかったのかな、ならば違う練習法をしてみようなど、相手にとらわれて、基準となる『軸(戦術)』がブレることが多く、特定の選手には勝てるけど、他の選手には負ける、という試合がすごく多かった
そこで軸をドンと構え、軸の幅が広がるよう、集中して取り組み、練習を重ねていく。すると軸がブレることがなくなり、競り合いや最後の1本の駆け引きで得点出来るようになりました」と語る。
優勝後、ベンチの石田大輔コーチと涙の握手
人にないものを最大限に生かす
全日本選手権にむけて、どのような取り組みをしていたのか。いかにして全日本選手権優勝に輝いたのか。
「世界選手権の選考会も終わり、自分がどういうプレースタイルで戦っていきたいのか、どういう選手になりたいのか、人としてはどういう風になりたいのか、と考えるようになり、1月6日の五輪代表発表の日に、伊藤選手の練習場でダブルスの練習をしていて、そこから帰る時に、今後どうしていくか、ノートにしっかり書き出して決めました。
『先ずは相手が誰であろうと自分のプレーをしっかり出すこと』。そこから相手はどこを嫌がっているのか、自分はどこがやりやすいのか、自分がやりにくくても相手が嫌がっているならそこを攻めよう、と整理出来たことが大きいと思います。
身長もそこそこあって、手足が長く、両ハンドドライブにも威力がある。人にないものを、最大限に生かす。誰にも真似出来るものではないと思います。中学生の時は、とにかく粘って、後ろから打っても間に合いました。今は前陣、もしくは台の近くでプレーしないと、台上技術、自分のパターンでない時の2球目、4球目、6球目で失点してしまい、得意の技術までつなぐことが出来ません。それでなくても、試合は自分の思い通りに進むことはありませんし…」
世界選手権代表選考会が12月末に終わり、全日本選手権まで3週間。残された時間は少なかった。
「練習内容を特別に大きく変えたとかではなく、意識を大きく変えた、という感じです。練習では間に合わなくてもいいから、手だけで反応せず、とにかく足を動かして反応する。いずれは取れるようになればいい、という考えです。悪い癖をつけない、良い癖をつける。正直、練習では全然うまくいかなかった。ですが、試合では無意識のうちに動ける。やってきたことは間違いなかったかな、と思います」
早田は、シングルス準決勝で伊藤に、決勝では石川佳純(全農)に勝利。初の決勝の舞台でも緊張はなかったという。
「今年のテーマは『挑戦』。緊張した場面を想定して練習を積み重ねてきたことで、それが嬉しさというか楽しさに繋がって、全日本で緊張はしませんでした。卓球って面白いなって思いました」
続きは8月8日配信の後編で。
早田ひながチャンピオンになるために欠けていたもの、そしてこれからの展望を語る。