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宮﨑強化本部長
今回、このコロナ禍で、JTTAとして大会を開催するのか、しないのかというところから検討させて頂いた。多くの方からやってほしいという要望があった。いくつかの開催すべきでない、という意見もあった。
私たち協会としては、選手の安全安心を一番に考えた上であっても、アスリートにプレーをしてもらうのが、協会の一番の役割だと、最終的には判断をした。
選手の皆さんには、大変厳しい環境で戦うことを求めてしまいましたが、試合というものは土地が変われば温度も変わる、フロアマットがあったりなかったり、寒かったり暑かったり、いろいろな環境がある。
今回、コロナ禍という環境だったが、そういう中でも対応しなくてはいけないのがアスリートだと思う。協会として開催出来たことに喜びを感じている。
参加頂いて、素晴らしい試合をして頂いたアスリートに感謝申し上げたい。
日本全国の卓球ファンの皆様には、実際に観る機会はなく、テレビ、ネットを通じてご観戦頂いたが、ご満足頂ける試合内容ではなかったかと思っている。
■女子決勝について
石川選手の巧みさ。卓球にはいろいろな技がある。その中に「巧み」という技がある。威力ではない。ストップ、ツッツキやブロックを織り交ぜて相手に攻撃させながら、コースをついてとる。攻撃は一発で打ち抜く、フルスイングをする。卓球を知り尽くした巧みさ。頭が下がりました。
平野、伊藤、早田の同世代3選手の決勝相手として3回連続敗れた悔しさがあって、へこたれるのではないかと思ったが、何が何が!また今年も決勝まで出て来て、3選手の代表格の伊藤美誠と対戦して、勝ってしまう。ほんとうに拍手を送りたい。勝つまでには、涙ぐましい努力が、その裏にはあるはず。
伊藤美誠のすごいフットワークや苦しい練習の様子をテレビで視たが、それ以上のことを石川はやってきたかもしれない。そうしないと勝てるわけがない。石川のこれまでの努力に敬意を表したい。
■男子決勝について
全日本選手権大会には魔物がいる、と私はよく言う。消極的にやった人間が、全日本で勝てることは、中々ない。特に、攻撃型の選手が守って勝つことは絶対あり得ない。唯一、水谷隼選手は守りが主体なので、守って守って勝てる。あとは、カットマン(がその部類)。
張本や丹羽は、超攻撃型選手。それが魔物に憑りつかれて積極性を欠いた。守りに入った。
自分の力が出るわけがない。そういう意味では、力を出しきれずに終わった。それは、技術でなくメンタルが原因。メンタルにつながる気合。気合につながる声出しが制限されたりしたことで、メンタルが盛り上がらないということはあったかもしれない。
アスリートはいろいろな対応、順応をしなければいけない中で、全日本の魔物に負けてしまったのかなと思う一方、吉村真晴、張本を倒して決勝進出した及川。
決勝も世界代表の森薗をゲームオールで退けた、あの素晴らしいバックハンドとラリー力。
そして、戦術転換の速さ。何と言っても、全てのゲームを通して焦った様子は全く見せない落ち着き払った態度。相撲で言うと横綱相撲。相手が戦術を変えて来ても、ドンと受けとめて対応するチャンピオンに相応しい態度、内容の試合だった。
身体は1メートル60だが、1メートル80くらいあるのでは?と思わせるくらいの大きな振り、豪快さ。たいへん素晴らしかった。それは、彼の心の中にある自信なり素養なりが、しっかり卓球に出て軸がぶれずに最後まで対応出来たということが優勝につながった。人間力が、そのまま成果に出たのではないかと思う。
■トップを目指す選手に期待すること
2001年からアンダー12ホープスナショナルチーム(HPNT)を増設してから若い選手がどんどんどんどん全日本で活躍するようになった。私たちの現役時代、全日本のベスト16には実業団選手が14,5人。大学生が1、2人が当たり前の時代だった。
HNT増設後、2006年水谷が優勝した年には9人の若手がランク入りと時代が変わり、今に引き継がれている。今、ジュニアの年代のうちに一般の部で活躍しないとオリンピックや世界代表にはなれない、ポテンシャルがないのでは?という風潮、兆しが見えるが、それは全くの間違い。20歳からでも25歳からでも活躍は出来る。
JTTAは、幼い頃からのハイポテンシャルな選手をいち早く育成したいという思いからHNTを作って早い年代からの成長を促している。しかし、日本代表をHNTからやっていないといけないということはない。遅咲きでも全然構わない。
何が言いたいかというと、たしかに若返りが進んでいるが、それが全てではない。
努力を忘れずに、しっかり頑張って社会人になってからでも日本代表は狙えるんだ!地道な努力が重要なのだ!ということをアスリートの皆さんには分かってほしくて、最後まで努力をして頂きたい。
その実例として、今日、ベテランの石川佳純さんが優勝しているし、ホープスの時から各年代でチャンピオンでなかった及川選手が今になって全日本チャンピオンという位置に立った。
遅咲きです。
こういうことはある。これから先もある。
アスリートの皆さんは、努力を重ねて将来は日本代表になって頂きたい。
皆さんに、現役が終わるまで活躍を期待したい。