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ニッタクニュースの人気コーナー「日本の肖像」から編集部がピックアップしてお届けします。
日本の肖像とは、各界でご活躍されている卓球人にご登場いただき、卓球を通じて学んだこと、その経験を生かした成功への道を語っていただくコーナーです。
第10回は2014年3月号より、香川隆二さんです。
※所属・年齢・事実は掲載当時のまま
文・写真■片野賢二
税理士・一橋大学OB
香川 隆二
1月1日の日本経済新聞(交遊抄)に、日清紡ホールディングス・河田正也社長の先輩として紹介された香川隆二さん。一橋大を卒業後、郷里の広島で税理士事務所を開設、ご活躍されている。湧き出るような経験の数々、楽しく聞きほれるまま取材の3時間が過ぎた。
求めよさらば与えられん。叩けよさらば開かれん。尋ねよさらば見出さん
「私の師匠は、元国際卓球連盟会長の故荻村伊智朗さんの本でした。本を見て、同じように真似をしていました」
卓球を父親に勧められ、広島大附属中に入ってから始める。
「始めたときから全国大会に出るのが目標でした。私の学校は弱小。指導者もいない。ですから強い人を求めて、一人で市内の高校や広島大に行って教えを請うていました」
中2のとき広島市で優勝すると、当時の県高校No1の広島商業に出向き、県チャンピオンに練習試合をお願いする。だが、一蹴されてしまう。
「恥も外聞もなく、お願いしましたが、コテンパンにやられました。あまりにも強くてショックを受けました」と、当時を振り返る。
香川さんの信条は、少年時代も今も変わらない。求めよさらば与えられん、叩けよさらば開かれん、尋ねよさらば見出さん、と言う。
意味は、与えられるのを待つのではなく、自ら積極的に行動・努力をすれば、必ずよい結果が得られる、目的を達成することができる、ということである。
高2でインターハイに出場。願いが叶う。
本を通じての師匠だった。荻村さんの合宿に飛び入り
東大を受験したが、不合格。当時東京都・三鷹市に住んでいた。たまたま通りを歩いていると、卓球場があり、なんと少年時代の師匠であった荻村さんが合宿練習中であった。当時荻村さんは34歳であったが、実力は世界レベル。飛び入りで参加させてもらい、荻村さんとゲーム練習をさせてもらった。
「バックの下回転サービスがものすごく切れていました。切れているとわかっていても落としてしまいました」と話し、また「相手の心を射抜くような鋭い目が印象に残っています」と懐かしむように話してくれた。
翌年、一橋大に入学。関東学生リーグ3部でプレー。得意のショートとサービスで、2部昇格にあと一歩のところまで貢献したが惜しくも2位にとどまる。全国国公立大会では単でベスト16に入っている。
卒業後、広島で税理士を開業。今年で36年になる。その間、卓球はもちろん、フルマラソンにもチャレンジ。完走は19回を数える。
また、ライフワークとして35年以上障がい者施設へ寄付と献血を続けている。献血は443回、70歳までに500回を達成するのが目標。今のペースでいけば69歳で達成する、と言う。
ところで、マラソンは禅に通じる、とも。
フルマラソン完走19回。走禅は、動にして心静か
その香川さんが47歳のとき、心の師ともいうべき人との出会いがあった。
その日は、初めてフルマラソンに参加する日だった。開催地の山口県岩国市に車で向かっていたとき、カーラジオからお坊さんの声が流れてきた。
『身心一如(しんじんいちにょ)』という言葉が胸に残り、その意味するところのさらに深い部分をその方に教えていただきたくなりました」
その方とは、岡山県加茂町の成興寺住職の小倉玄照師である。
「小倉老師は、頭のみで説いた実践的でない法話が多い中で、常に現代の問題とからめて、それをご自身の言葉で話して下さいます。あれほど明晰な頭脳の持ち主は知りませんね」
それ以後、参禅に通っている。その香川さんは、「坐禅」に対し、マラソンを「走禅」と表現している。
「坐禅」は、静にして心動き、走禅は、動にして心静か。
琴線に響く言葉だ。これは香川さんのオリジナルと言う。
ところで、インタビュー中にときおり見せる笑顔はまるで10代の少年ようだった。
これまで100人以上の方々を取材してきたが、愛くるしいその笑顔は初めて。
トンボとりに夢中になって原っぱを夕暮れまで駆け廻る姿が目に浮かんできた。
今後の目標は、との問いに、「フルマラソンで3時間を切ること。それには体重を60キロ以下にしないといけないですね。そのために、平日は2時間半、土日は6時間ほどスポーツジムで卓球とトレーニングで汗を流しています」
継続の非凡さと行動力には敬服する。