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ニッタクニュースの人気コーナー「日本の肖像」から編集部がピックアップしてお届けします。
日本の肖像とは、各界でご活躍されている卓球人にご登場いただき、卓球を通じて学んだこと、その経験を生かした成功への道を語っていただくコーナーです。
第16回は2012年2月号より、大田研一さんです。
※所属・年齢・事実は掲載当時のまま
文■細谷正勝
写真■安部俊太郎
株式会社企業再生投資顧問
大田 研一
入れ替え戦男
今回のゲストは、株式会社企業再生投資顧問の大田研一氏(64歳)で、楽しいお話を伺った。
同氏は、一橋大卓球部のOBで、入れ替え戦になると無類の強さを発揮したという。
「入れ替え戦になると妙に燃えて、2回出場して負けなしです。リーグ戦ではついに1勝もできなかったんですが。なんでリーグ戦であの戦いができなかったんだろうと今も思いますよ」
当時の一橋大は、3部リーグに在籍。入れ替え戦で大田さんのオーダーは後半の勝負所。
「その時は俺たちはやせても枯れても3部なんだというプライドもあったし、目の前のボールに神経を集中して戦いました」
リーグ戦で勝てなかった理由もわかっている。
「ミスをしたくない。かっこよく戦いたいという邪念があって、攻めが単調になっていた。相手にとっては、何とも戦いやすかったんじゃないでしょうか。そのことをなぜ気がつかなかったんでしょうか」
昭和22年3月18日、岡山市生まれ。3歳から14歳まで広島で過ごし、その後東京・武蔵野市に引っ越してきた。武蔵野一中時代は、ちゃぶ台を使って卓球で遊ぶ。本格的に始めたのは立川高に入ってから。武蔵野市民大会で単3位になっている。
一橋大には二浪して入った。3年目は退路を断って臨んだら、先が開けたという。
「受験に失敗して2度と同じような経験はしたくないと思いました。でもこの思いが強ければ強いほど、また同じことをやってしまった。勉強も卓球もゴルフも勝った経験がない人が勝ちを意識するとほとんど自滅しています」
だから指導者の大切さを痛感している。ゴルフはティーチングの桑田泉氏のアドバイスに感銘を受けた。同氏は、PGA2010ティーチングプロアワード最優秀賞を獲得している。
教えは、「プロのものまねをしては駄目。パターやアプローチ、アイアンなど細かいところからやればそれ相当に戦えるようになる」というもの。
「目からウロコです。大学受験では好きな部分ばかりやっていましたから」
大学卒業後はNECに入社。財務部の同期入社に学習院大学卓球部の人がたまたまいて、卓球を続けた。
全住友大会や三井・三菱・住友対抗戦などで活躍。「交友関係が広がりました」
29歳~31歳までマイラケット持参でテキサス大アーリントン校に学び、80~87年、92~97年はニューヨーク勤務を経験した。
指導者の力が重要になる
2000年12月に一つの区切りとしてNECを退社。その後の10年は外資系の証券会社に勤務したり、ベンチャー企業の顧問、研修・コンサルティング業務、大学教授、上場企業の社外監査役、ゴルフ場ビジネス再生などを手掛けている。この10年間はまさに激動の毎日だったという。
「現在はM&Aで会社のマッチングの仕事をやっています。奥が深い社会情勢なので一本勝負では通用しません。昔と同じことをやっていては駄目。刻々と変わってゆく環境に自分が応えられるのか、常に自分を変えていかないと務まりません。サラリーマンも同じだと思いますよ」
最近シェークのラケットを購入した。学生時代はドライブマンだったが、動けなくなったため宗旨変えした。卓球からは5年くらい遠ざかっている。
「もう一度卓球をやりたい。ビジネスに心理戦の駆け引きがあるように、卓球にもある。これを味わいたくて」と話す。
大学の後輩たちが港区のスポーツセンターでやっているので参加を考えている。
「自分のスタイルをどう作るか。自分の好きなことばかりやっていては勝てませんから。日本の卓球界はずいぶん明るくなりましたね。ユニフォームや卓球台、ボール、どれをとっても自分たちがやっていたころとは変わりましたね。それにスター選手が出てくると注目度も違ってきます。いい方向に進んでいると思いますよ」
しかし、進歩していると同時に、素人が入りにくくなっているという。サーブで決まってしまうことが多いので、「難しいし、つまらない」
スピンがかかってボールが切れて来ると「どうしたらいいのか、めげてしまいます。年代別にやればいいのかも」
すべての競技にいえることだが、技を磨くための練習施設が充実し、いい指導者がいれば競技人口が増え、競技力もアップする。そこで重要なのが指導者の力。
「知っていることと教えることは違います。どんなことにも通用するテキストがあればいいんですけどね」
ビジネスの指導も同じことで、あらゆる情報の収集と自己研さんに余念がない。