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ニッタクニュースの人気コーナー「日本の肖像」から編集部がピックアップしてお届けします。
日本の肖像とは、各界でご活躍されている卓球人にご登場いただき、卓球を通じて学んだこと、その経験を生かした成功への道を語っていただくコーナーです。
第24回は2008年1月号より、河合弘之さんです。
※所属・年齢・事実は掲載当時のまま
撮影:安部俊太郎
取材:細谷正勝
さくら共同法律事務所所長弁護士
河合 弘之
関東学生リーグで2部に昇格。″天に昇る気持ちだった″
今回はゲストに弁護士の河合弘之氏(63)をお迎えした。
日比谷公園を眼下に見下ろすビルの一室。大学を卒業してから40年以上も経っているのに、まるで昨日のことのように一気に話しだした。一度話しだしたらもう止まらない。
「天にも昇る気持ちになったのは、昭和40年に関東学生リーグで2部に昇格したときと司法試験に受かったときだけ」
河合氏は東大卓球部OBで、現在はさくら共同法律事務所の所長弁護士。日本卓球協会の顧問弁護士も務める。東大卓球部といえば戦前は1部に所属し、常に優勝争いを行っていた。しかし、昭和30年に3部に転落、その後は低迷していた。河合氏は40年に2部に昇格したときのメンバーだった。
「今でもそのときのことははっきり覚えています。同期の4人と頑張ってね」
4人とはキャプテンの木村敬道氏(株式会社高文代表取締役社長)、鈴木兼四氏(IPPジャパン株式会社代表取締役社長)、山口県防府市で耳鼻咽喉科を開いている山根仁氏と河合氏。
強いメンバー5人をそろえないと、上に上がるのは難しい。そんな状況の中で2年後輩の久保博司氏(大成建設役員)を加えて、東京教育大(現筑波大)との入れ替え戦に臨み、悲願を達成した。
2部在籍は1年。1季目は歯が立たなかったが、入替戦で辛うじて残留。司法試験で忙しく欠場した2季目終了後に降格した。「おれがいなかったからダメだったんだ」と主張したが、だれも納得しなかったという。「1年でもいいから2部にしがみつこう」と共通の目的に向けて結束した4人は、今も仲がいい。
卓球を始めたのは国立第3小3年のとき。担任の先生が昔卓球部にいたそうで、教えてもらったのがきっかけ。国立市の小学生の部で5・6年と連覇。桐朋中に進み1年からレギュラーに。桐朋高では2・3年の東京都下大会で優勝している。都の団体戦では決勝まで進んだが、惜しいところで負けて涙をのんだ。「結構強かったんですよ」。東大でも1年からレギュラーになっている。
もともとはペンホルダーだったが、中3からシェークハンドに替えた。「カットで相手のスマッシュを返すのがカッコ良くてね」。故荻村伊智朗氏に2回ほど手ほどきを受けたことがある。そのときにいわれたことは「そんなに後ろに下がっていてはダメ。もっと前に出なさい」。
桐朋高校時代の雄姿
共通点は一対一のバトル。ファイテングスピリツトは卓球から
東大卓球部70年史の歴代部員紹介では「高いが変化のあるシェークカット。ネットイン、エッジと声が武器。実力以上に勝負強い」と記されている。本人の弁によると「カットマンで粘りが身上。ツッツキでは負けたことがなかった。ただし、攻撃が下手で守備だけの選手。カットの変化だけで勝っていた」。
大学で学んだのは「卓球・マージャン・司法試験」。司法試験は在学中に合格している。
「小学生のころから弁護士になろうと思っていた。担任の先生に『キミは良くしゃべるし、口がうまい。弁護士になったらどうか』といわれたのがきっかけ」
現在はフィリピンの日系2世や中国の残留孤児の日本国籍取得に尽力したり、地球環境の保護や自然エネルギーの推進などの運動に積極的に取り組んでいる。「私が目指すものは①企業の法令順守と企業の社会貢献を広めること②未来世代の代理人として地球環境を守ることです」。
「卓球と弁護士の共通点は、一対一のバトルというところ。弱い相手にはかさにかかって攻める。強い相手にはとにかく粘る。ファイティングスピリットは卓球で培われたものです」
自宅に60畳の柱のない部屋を作り、卓球台を置いている。練習用のマシーンも導入。月に1回ほどだが、深夜に一人でコツン、コツンと練習する。
「おそらく同期の中で最も強いんじゃないかな。でも知らない人がみたら、気味が悪いでしょうね」と笑う。
卓球界に対しては一家言持っている。「卓球がもう一つ盛り上がらないのは、ラリーが少ないからだと思いますよ。今はサービスか3球目、5球目で決着がついてしまう。息をのむラリーの応酬がない。卓球界のトップは考えるべきだと思いますよ」。
ただ注文をつけるだけでなく具体的な提案もする。「たとえばボールを大幅に大きくするとかね」。記録を競うスポーツでは難しいが、勝負を争うスポーツなので可能なのではという。「守って勝てる卓球もあっていいのではないでしょうか」。
以前の健康法はテニスだったが、最近は犬の散歩やアスレチックで汗を流す。水泳もやる。そのうち本格的に卓球をやろうとも考えている。「仕事が暇になったら、ラージボールの世界選手権にでも出ようかな」。
高校時代の仲間と