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ニッタクニュースの人気コーナー「日本の肖像」から編集部がピックアップしてお届けします。
日本の肖像とは、各界でご活躍されている卓球人にご登場いただき、卓球を通じて学んだこと、その経験を生かした成功への道を語っていただくコーナーです。
第23回は2009年4月号より、遠藤俊一さんです。
※所属・年齢・事実は掲載当時のまま
撮影■安部俊太郎
取材■細谷正勝
東信電気株式会社代表取締役社長
遠藤 俊一
明るく楽しく、そして誠実に
今月は日本リーグ1部復帰を果たした東信電気総監督で、同社社長の遠藤俊一氏(65)をゲストにお迎えした。チームのモットーは「あくまで仕事第一、卓球はクラブ活動の延長線上で行う」と決めている。企業が続々とスポーツ界から撤退していく中で「企業スポーツのお手本になりたい」と話す。
日本リーグの会場へいけば必ずこの人に出会う。企業の社長さん自らが総監督を務め、常にユニホーム姿でベンチ入りしているのはほかに例がない。試合があるときは前日から現地に入り、夕飯も選手たちと一緒にとる。
「ベンチで応援するのが生きがい、あの臨場感がたまりません。卓球に関しては一部員で、社長だとは思っていません。現役部員が一丸となってチームを応援するのは当たり前です」
昨年3月、日本卓球リーグ実業団連盟副会長に就任した。
「話をお受けする際、自チームの試合があるときはベンチに入ることを認めていただきました」
公式行事などがある場合は、スーツとユニホームを持参し、本部席で早変わりする。
「人は心。人を動かすためには、自分の心を動かさなければ通じない。自分がどうあったら他人を動かせるのか。そのためには明るく楽しく、そして誠実に」
1944年(昭和19年)1月21日、東京・中野区で生まれ、品川区で育った。中学から卓球部に入ろうとしたが、希望者が多すぎてかなわなかった。当時は戦後まもなくで貧しく、卓球が超人気だった。都立九段高で念願の卓球部に。都大会は2回戦止まり。
「高校時代はコンプレックスとの戦いでした。スポーツも勉強も中途半端で」
横浜国大に進学、その後の運命を決める言葉に出会った。高校の2年先輩で早大に進んだ小暮卓氏の『スポーツマンにとって、なにゆえ勝つことが尊いのかわかった気がする』という文章だった。
「この言葉と出会わなかったら今の自分はなかったでしょうね。人生で大切なのは自信を持つこと。それを身につけるにはどんな小さなことでもいいから成功体験をすること、だということがわかりました」
1年間とにかく卓球に打ち込んだ。ペンのショートからシェークのカットマンに変身。メキメキと腕を上げて、4年では神奈川県大学大会の複を春秋連覇した。さらに下級生や高校生のコーチをしたことで人間の幅も広がった。下積みの6年間あきらめずに取り組んだのは「好きだったからでしょうね」
住金物産に4年間勤務、71年に父親が経営する東信電気に入社した。40歳で社長に。同グル―プは1950年創立。コンピューター関連機器、通信関連機器、映像関連機器等の設計・開発から製造、販売、修理までを行っている。基本理念は『人はともに幸せにならねばならない。しかし、それは自らが情熱をもってつかみ取るものだ。待っていては来ない』
『ほれられる会社づくり運動』の中で″東信の心10項目″というスローガンがある。その最後に「チャンピオンを目指せ」とある。
「社員にはチャンピオンを目指せといっています。あいさつの声が一番大きいとか、掃除が一番うまいとかでいいんです。どんな小さなことでも自信がもてれば、次の目標が見つかり、新たな挑戦ができます」
人生の3本柱は「仕事・自分・家族」
卓球部は今年39年目。第1期は神奈川県高津地区の大会で活躍していたころ。第2期は全日本実業団選手権に出場したころで「私も53歳、55歳の時に出場しました」
そして第3期は03年に日本リーグ入りを果たして以降。2部からスタートして、12シーズンで1部を4回経験している。
「町の大会に出ているときに夢物語として、将来は日本リーグ参加と話していました。それが現実となり国際大会に4選手が出場しました。大したものです」
部員は競技選手が男女各5人、一般部員10人の計20人。練習は02年に建設した新ビル(川崎市麻生区)内にある多目的ホールで行っている。午前9時から午後5時30分までは仕事、練習はその後になる。「自分の会社で卓球練習が出来る、これに勝る喜びはありません」
それでも仕事第一という姿勢は変わらない。13シーズン目となる今年の前期大会は1部に復活する。1部といえば国内最高峰の舞台で、プロ契約の選手を抱えるチームも多い。
「むやみに補強はしません。卓球をやめたら会社を辞めなきゃならないようでは寂しいじゃないですか。当社の考え方を理解していただいた方だけを採用しています。私どもの考え方が企業スポーツの手本になれればと思っています」
常に目標を立て、挑戦を続けている。人生の3本柱は「仕事・自分・家族」
仕事面では社会貢献、ほれられる会社づくり、ワンハンドレツトドリームプラン(100項目のドリームプラン)の達成が目標。100ドリームプランは今年3月で丸8年になるが、現在55項目、214件を達成している。
自身の夢は「卓球の日本リーグ入りと歌手の島倉千代子さんに会うこと」
日本リーグ入りは達成、残るは島倉千代子との面会だったが、会社の創立55周年であこがれの人のショーが実現した。遠藤さんはステージに上がる前に花束を手渡す役だったが、「涙が止まらなくなってしまったのです。島倉さんもびっくりされたことでしょうね。素手で涙をふいていただいたのが最高の記念です」
家族との夢は船で世界一周すること。現在は次の目標を模索中で「テーマ探しは実に難しい。計画の重要性(目標・目的)を感じています」
時機を見ては後輩たちのために、後世に伝えておくべき事などをメモに書き留めたり、文集としてまとめている。「そうしておかないと、伝言ゲームになってしまい、意としたことが伝わらないから」
卓球はここ2、3年、12月の合宿だけに参加している。昔は部内リーグで上位にランクされていたが、最近は下位に甘んじている。「やめてしまったのかって?アマチュアに引退はなしです」
50歳代後半からはじめたゴルフは「手応えを感じています」
若い社員たちには「若いころにしか出来ないことをやりなさいと話しています」