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昭和22年創刊、800号を迎えたニッタクニュースのバックナンバーから編集部がピックアップしてお届けするページです。
前回に引き続き「アメリカ男子に初優勝をもたらした脅威のニューサービスって?」の後編です。
※ここに紹介の記事は、原文を一部抜粋、編集しています。敬称略
QアンドAとエピソードでつづる世界選手権おもしろ史
第11回1937(昭和12)年2月1~7日 バーデン(オーストリア)
Q――アメリカ男子に初優勝をもたらした「驚異のニューサービス」とは?
A……指で回転を与えるFS(フィンガースピン)の開発
まさに「第三の危機」
――そのサービスが世界中に広まったら、サービスで得点することが多くなり、ラリーのつづかない面白くない試合がふえるわけで、まさに「第三の危機*」と言うべき出来事だったんだね。
……国際卓球連盟はこの大会中にひらかれた総会で、フィンガースピン・サービスを禁ずるルール改正を行った。できるだけ早く実施したほうがよいという判断から、この年の秋に始まる37/38年のシーズンから適用(採用)した。
これによって「第三の危機」を乗り越えたが、アメリカチームのこの開発は、超強力なサービスをもつことが勝利への近道であることを世界に示した最初の出来事だった。また、すごいサービスが出現したら、ルール改正をしてそれを制限ないし廃止するという「これから先何度も起こること」の最初の出来事でもあった。
こぼれ話
「来年は手品師を代表選手として送る」とハンガリー協会が発表
アメリカに敗れたハンガリーの協会は、敗戦直後に次のような発表をした。「国際卓球連盟がフィンガースピン・サービスを禁止しなかったら、われわれは来年のウエンブレー(ロンドン郊外)大会に卓球選手ではなく、フィンガースピン・サービスのよくできる手品師5名を男子団体のメンバーとして送る」と。
国際卓球連盟のすばやい決定によって、ハンガリーはロンドンへ手品師を送らなくてすんだ。そして次大会で、男子団体に優勝した。強力な武器を使えなくなったアメリカは2組のリーグ戦でA組の第3位(5、6位)に後退した。
各種目の優勝
男子団体:アメリカ(シッフ、マクリュアら)
女子団体:アメリカ(アーロンズがエース)
男子シングルス:バーグマン(オーストリア)
女子シングルス:優勝者なし
男子ダブルス:ブラットナー/マクリュア(アメリカ)
女子ダブルス:デベトリソワ/ボトルブコワ(チェコスロバキア)
混合ダブルス:バーニヤ/ボトルブコワ(チェコスロバキア)
藤井基男(卓球史研究家)
1956年世界選手権東京大会混合複3位。引退後は、日本卓球協会専務理事を務めるなど、卓球界に大きく貢献。また、卓球ジャーナリストとして、多くの著書を執筆し、世に送り出した。特に卓球史について造詣が深かった。ニッタクニュースにおいて「夜明けのコーヒー」「この人のこの言葉」を連載。
本コーナーは藤井氏から「横浜の世界選手権に向けて、過去の世界選手権をもう一度書き直したい」と本誌編集部に企画の依頼をいただいた。執筆・発行の14日後、2009年4月24日逝去