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2020.09.24

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インタビュー石川佳純 史上2人目の全日本選手権大会3冠達成!(2015年4月号から)

  • 劣勢でも落ち着いてプレーし逆転した

昭和22年創刊、800号を迎えたニッタクニュースのバックナンバーから編集部がピックアップしてお届けするページです。

 

石川佳純選手(全農)が女子では史上2人目となる、全日本選手権大会での女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルスの3冠を達成した2015年全日本選手権大会。大会までに如何に備えたのか、そしてこれからの目標を語ったインタビューをピックアップ!
*所属・年齢は当時のままです。
*ここに紹介の記事は、本誌記事を一部抜粋、編集しています。文中敬称略
本誌記事ページはこちら!

 

重圧の中臨んだ、今年初となる大会・全日本選手権。
前回覇者の石川は何を得たのだろうか。

 

2014年末、タイで行われたITTFグランドファイナルにおいて日本女子選手として初の優勝を達成。石川にとって素晴らしい1年になった。

年が明け、ITTFから発表された世界ランキングでは自身最高となる4位にランクインされた。

全日本直前、福原愛(ANA)が故障のため棄権と発表された。これで女子優勝は石川と決まった。1年前の全日本とは、明らかに周囲の目が違った。

若手が台頭した今回の全日本だったが、石川はシングルス、ダブルス、混合ダブルスに優勝。

女子では54大会ぶり史上2人目となる3種目制覇を達成した。

世界ランキング4位に恥じないプレーを見せたが、優勝までの道のりは険しかった。

 

2回戦で横山輝・𡈽田美佳組(原田鋼業・中国電力)に大苦戦した混合ダブルス。女子ダブルス決勝は、阿部愛莉・森薗美月(四天王寺高)の若手ペアに攻められた。しかし、両種目に優勝した。

女子シングルス準決勝は、高校生・前田美優(希望が丘)との対戦となった。同戦型の前田を意識し、左利きのトレーナーを準備、対策を練った。

ゲームは硬さが見える石川に対し、積極的にバックから攻めるプレーでペースをつかんだ前田が3対1とリードすると会場がざわめきだした。ここから石川が本来の切れ味鋭いプレーを見せ2ゲーム連取。3対3に戻した。

こうなると百戦連覇の石川に軍配が上がるか、と予想された。

 

ミスの許されないピンチの場面で見せた攻めの姿勢

最終ゲーム。後がなくなった前田が再び猛攻。前田エッジで5-4とリードし、チェンジコート。再び会場がざわつく。

6-6、7-7、8-8一進一退。だが、ラリーでポイントをあげ前田が9-8とリード。石川大ピンチ。このとき石川敗れる、と感じた観衆は少なくなかったかも…。

サービス前田、石川レシーブ。ここで、このときの一本が今大会一番のプレーでした、と石川。

「8-8になったときのレシーブをツッツキで返し、そのボールを先に攻められて、ラリーになり失点しました。ここで8-9となりました。今までの自分であれば、もう一回ツッツキのレシーブをしてしまい負けていたと思います。

でも去年1年間、苦しい試合をたくさん経験することができていたので、戦術の幅が増えたというか、競った場面でも落ち着いてプレーすることができていました。ですから、8-9で攻める気持ちでフリックレシーブをすることができました。苦しい経験があったからこそ、あの場面で今大会一番のプレーが出せたと思います」

9-9に追いつきサービスは石川。バックに長めのサービスが効果的と判断し、勇気を出してトス。見事に決まり決勝進出を果たした。

決勝には、同級生の森薗美咲(日立化成)が勝ち上がってきた。第1ゲームこそ落としたが、続く4ゲームを連取し、2年連続3回目の皇后杯を獲得するとともに、昭和35年の山泉和子以来54大会ぶりに3冠選手が誕生した。

「本当にながい長い1週間でした。ほんとに疲れました」

プレッシャーから解放された石川。瞳には涙があふれ、安堵の表情を浮かべながら、次のように話した。

「今大会、決勝以外は全員年下との対戦となりました。ある程度予想はしていましたが、想像以上に相手が向かってきました。

キツかったですが、それだけ周りの人に認められているということになりますし、良い経験になりました」

今以上にメンタルの強さと身体の強さに磨きがかかれば、長く石川時代が続くだろう。

 

去年の積み重ねがあるから今がある

2013年世界選手権パリ大会が終了した。石川は、元中国代表選手の陳莉莉(アドバイザリースタッフページ)さんを新コーチとして迎えた。

迎えた2014年。石川は、全日本選手権大会で2度目の優勝を遂げ、また大きな経験を得た。

世界選手権東京大会の準々決勝オランダ戦のラスト、準決勝の香港戦のラスト、アジア競技大会のシンガポール戦のラストで勝利。また、グランドファイナルでは初優勝を果たした。

「緊張した場面や勝たなければいけない場合で、いずれも勝つことができました。自分にとっては大きな勝利だったと思います。

また、今の自分と1年前の自分とでは、はっきり違うことがわかります」と分析。では何が違うのか。

「何が変わったのか、と言われるとどう答えていいのかわからないですが、苦しい試合を経験して勝つことができました。多くの経験を積むことができたことだと思います。

もちろん今でも苦しい展開になって、まずいな、と思うときもありますが、簡単に負けられない、と前より思うようになりました」

コーチになって1年半。陳コーチは、「勝たなければいけない場面で勝つことができた。いい試合をして勝てた。選手としてこれ以上大きな経験はないと思います。

勝負への執着心が生まれ、それが粘り強さにつながっていると思います」と石川の成長を認める。

 

世界の頂点へ向けて

普段は、男子ナショナルチームの合宿に交じり、練習を積む。男子と練習するようになって全体的なレベルアップを実感しているという。

「男子との練習では、甘いボールを打ってしまうと、一発で打たれてしまいます。最近では、体が自然と意識できるようになり、厳しく、鋭いボールが打てるようになっていると思います。相手の強打に対しての恐怖心もなくなってきていると思いますので、全体的にレベルアップしていると思います」と充実した表情で話してくれた。

4月末から中国・蘇州で世界選手権が開催される。

「14歳のときから世界選手権に出場させてもらっていて、良い経験ができていると思います。

世界選手権には今年で9回目の出場になりますが、回数だけで言えばベテランだと思います。

ただ、世界選手権は全日本選手権とはまた違う心境で思い切って挑戦できると思います。上位に進出するには、中国選手を含めた強い選手に勝たなければいけないと思うので攻めのプレーで、向かっていきたい」と力強い抱負。

世界ランキング4位。自身最高位をマーク、もちろん日本選手最上位となる。

「世界ランキング4位になったことは嬉しいです。でもあまり気にしていません。今は世界選手権、リオ五輪、東京五輪に向けて実力をつけていくだけです。ここからが勝負で、ここから強くなるのが難しいのは自分でもわかっています。ここからが本当の勝負になると思います」

と、それまでの笑顔から一転、力強いまなざしで答えてくれた。

練習中や試合以外では、いつも笑顔で明るく応える。しかし、こと卓球の話題になると、笑顔の表情から毅然とした表情に変わり、目標を話してくれた。

「本気で中国に勝ちたい。中国が相手だからと言って負けるのは悔しい。この悔しさを忘れず、もっとレベルアップします。」

と、取材後、レコーダーが回っていない時に話してくれた。

それがアスリート石川の本音だろう。